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安土町合併を考える住民説明会&提言書 その3

安土町将来のまちのあり方提言書(本文)

1.安土町を取り巻く現状と課題
安土町は、昭和29(1954)年に安土村と老蘇村が合併して誕生した。日本社会が戦後復興期、高度経済成長期、バブル経済とその崩壊を経て大きく変貌する中で、安±町を取り巻く環境も大きく変化し、町が直面する課題も山積している。
①少子高齢化の進展
平成17年に日本の総人口は減少に転じ、わが国はこれまで経験したことのない「人口減少社会」に突入した。安土町においても平成12年調査をピークに人口が減少し、50年後には、町誕生当初(50年前)よりも人口が少なくなると見込まれている。
また、急速に進む少子高齢化は、保健・医療・福祉等への支出増につながっており、深刻な状況となっている。
安土町においても20年後には高齢者の割合が約9%増加するのに対し、それを支える生産年齢人口は逆に約7%減少することが予測されており、こうした高齢化にともなう福祉サービスの質と量をどのように確保していくかが課題となっている。

②地方分権の進展と行政ニーズの高度化・多様化
地方分権の流れは、平成12年の地方分権一括法の施行を契機として加速し、現在も進行中である。分権時代の基礎自治体は自己決定・自己責任の原則のもとで、高度化・多様化する住民ニーズに応えなくてはならない。
基礎自治体は地方分権によって、多くの権限が得られるかわりに、より高度な行政判断や専門知識が必要となる業務が増加するため、企画・立案能力のある職員や専門知識を持つ職員の確保が必要になっている。
しかし、安±町の行政規模では、定員等の問題により政策・企画部門や環境・福祉一教育・情報通信等の専門知識を要する部門に人材を配置することが困難な状況であり、今後の課題となっている。

③財源をめぐる環境の変化
安土町の財政カ指数は0.57(平成18年度)で、近隣2市3町では最低である。また経常収支比率も90.9と財政の弾カ性に欠ける状態となっている。
また、平成18年度の一般会計決算額は、地方交付税や町税の減少により5年前の4分の3の規模に縮小している。
また、今後も大幅な人口増や産業の立地が期待できない中で税収の減少が懸念されるほか、国・地方あわせて800兆円を超える借金を抱える中で、これまで安土町の財政を支えてきた地方交付税の先行きも不透明な状況となっている。これに対し、既に安土町では、安土町行政改革大綱・集中改革プランに基づき、職員数の削減や行政サービスの見直しに取り組んでいるが、その一方で少子高齢化にともなう行政需要や地方分権による業務の増加、特色あるまちづくりに対応できる基礎自治体としての財政基盤の強化が課題となっている。

④広域的な行政ニーズの増大
行政サービスの中には、1つの自治体で行うことが困難な業務や、広域で行った方が効率的な業務があるため、安土町では既に、ごみ・し尿・消防等の分野において、一部事務組合などの組織によって広域的な処理を行っている。
今後は、これまで各市町が個別に行ってきた業務についても、効率化のため統合・広域化を検討していく必要がある。

⑤住民の行動範囲の広域化
交通手段の発達によって、通学・通勤・買い物など、住民の生活圏は市町の枠を越えて広がっている。安土町が誕生した当初と現在を比較すると、町外に通勤・通学する人の割合は大きく増え、住民の約70%に達しているほか、消費者の動きをみると、町内よりも近江八幡市や東近江市で買い物をする人が多くなっている。
今後は、住民の生活圏に見合った広い地域での住環境の整備、行政サービスの提供が必要となる。


2.まちの課題  -ワークショップとその議論から-
本検討会議においては、委員がどのような問題意識と課題認識を持っているかを知るために、ワークショップ方式で問題と課題の抽出、整理を行った。
もっとも、総合発展計画の策定審議会と異なり、まちづくりの方向性やあり方、具体的な実現方策などをじっくり検討することを目的としているわけではないので、ワークショップでの作業目的は、あくまでも委員の多くに共通する問題意識と課題認識を抽出することに限定される。
そのような作業成果の具体的な内容は会議資料の通りである。その整理を検討素材にし、会議での論議を振り返ると、概ね次のようなまとめができる。
なお、ここで列挙した課題はあくまでも検討会議で出された委員の意見を基に例として示したものであり、検討会議として議決をしたものではない。とはいえ、委員の多くが共通して有している平均的、一般的な課題であると言っても間違いではない。

①歴史資源、自然-地域資源を保全し、全国に向けて紹介。訪れる人々に親しんでもらえる体制づくり-
安土町に住む人々の多くは、安土町に多くの歴史的資源が存在し、豊かな自然が残っていることを誇りに思っている。
そして、これらを保全して、後世に受け継ぐことの必要性を感じている。
一方、安土町周辺の歴史資源、自然資源は、この地域の人々だけのものではなく、日本人全てにとっての誇りであるとも言える
したがって、これらの資源を保全するだけでなく、全国に向けて紹介し、全国から訪れる多くの人々に親しんでもらうための体制も整えなければならない。
そのためには、地域が有する資源の適切かつ有効な活用も視野に入れなければならない。そこで、例えば次のような課題が抽出できる。
●歴史と自然の息づく地域づくりの推進
●歴史と自然を守り受け継ぐ意識の醸成
●歴史と自然を守り受け継ぐために必要となる経済基盤と組織体制の確立
●歴史と自然を守り受け継ぎ、適切に活用する上で必要となる専門知識や技術の確保
●全国に向けての安±の歴史と自然に関する情報発信と観光振興

②都市基盤、経済・産業-現在の住環境の良さを維持しつつ、生活関連の都市基盤を充実-
安土町に住む人々の多くは、安土町が住むに適した住環境を持っていると感じている。上述①の歴史や自然の資源に恵まれているということもその一因であるが、さらに豊かな人間関係や自然災害が少ないことなども背景にあるようである。とりわけ、近隣住民との良好な関係、信頼関係などが充実していることを挙げる人も少なくない。
このような住みやすい町の現状を大幅に変えるようなことを望んでいる人は少ない。むしろ、「現状を維持することができればよいのだが」と思っている人が多い。
しかし、住んで快適、便利なまちになるためにはまだまだ都市基盤の整備は十分とは言えない。また、雇用や教育といった機能は安土町内だけでは賄いきれない状態であることも認識されている。
そして、一番重要なことは、何もしないでいると、人口減少、少子高齢化の深刻化、町財政の悪化、生活基盤・社会基盤の老朽化などから、現状を維持することはおろか、状況が悪化しかねないという危倶を持っている人が少なからずいることである。
したがって、今後、若い世代を中心に緩やかな人口増加ないし現状の人□規模を維持していくためには、現在の住環境の良さを維持するだけでなく、さらに生活関連の都市基盤を充実させることも必要である。その前提として、地域の経済力を何らかの形で高めることも検討しなければならない。そこで、次のような課題例が抽出できる。
●地域住民の自主性、主体性の確立とその活動に対する支援の拡充
●生活関連を中心に都市基盤整備の一層の推進
●全国に通用する地域ブランドカの確立
●農業をはじめ地元の産業の活性化
●周辺地域との連携による新たな雇用の創出
●子育て、教育、文化、福祉など生活の質を高めるために必要な施策の充実とネットワーク化の促進

③行政、地域コミュニティ -地方分権を担える基礎自治体として、住民自治の確立と高い行政能カを確保-
安土町の住民の多くは、現在の町に一定の誇りと満足を感じている一方で、今の良さをただ享受しているだけでは次第に状況が悪化する危険性があるという問、題意識を持っており、できることならさらに良くしたいという意欲も持っていると言ってよいだろう。
そのために、個人(家庭)や地域社会において、自主的、主体的な取り組みを進める必要が認識されており、これまでにも多くの活動の実績がある。これらの取り組みを今後とも維持、発展させていくことの重要性は言うまでもない。
同時に、行政に一定の役割を期待する声が多いのも事実である。もちろん、従来のように、何から何まで行政にお任せの行政依存の発想は少ない。あくまでも住民が主体であるとしつつ、行政を良きパートナーとして捉え、技術面や財政面を中心とした支援を期待する意見が多く見受けられる。
そこで、地方分権を担える基礎自治体となるため、行政には、住民自治の確立を図るとともに、環境問題や少子高齢化といった全国的な問題への対応、あるいは都市計画や生活環境の整備などの地域課題の達成に対して、専門的に関われるだけの高い能カが求められるのである。
以上のことから、次のような課題例が抽出できる。
●地域住民によるまちづくりの一層の推進
●狭域自治(基礎自治体内でより狭い地域・地区を単位とした住民自治)を推進するための制度の確立
●地方分権の担い手として、新時代の行政の役割の確定
●地域課題に対応した政策立案と実施ができる政策能力と行政体制の確立
●より専門性の高い行政の実現


3.課題解決に向けて検討すべきこと
以上のとりまとめから明らかなように、委員の多くは、現状を大幅に、あるいは急速に変えようとは考えていない。むしろ、今の良い面を中心に、現状を守っていこうという意識が強いと言った方が適切であろう。
しかし、現状を守るという一」とは、今のままで何もしないということではないし、何もしないと現状は守れないという認識も強い。では、何をしなければならないのか。

①住民の主体性の下での地域づくりを一つの側面として、検討会議の論議では、住民自身や地域での取り組みの重要性がしばしば指捕された。行政依存ではなく、地域づくりは住民の主体性の下で進める必要がある。
このような取り組みは、町全域で均一に行われるのではなく、むしろ狭域の区域が中心になるだろう。その意味では、現在の安土町という行政区域でさえ、既に大きすぎるということにもなる。ただ、住民の主体的な活動であればあるほど、行政区域は直接には関係しない。
反面で、住民の主体性が弱い場合、あるいは行政依存心が強い場合は、様々な要求や要望を行政に届け、多くの行政支援を求めなければならないため、いわゆる「住民の声が行政に届きやすい」とか「きめ細かな行政サービス」といった要素が重要視されることになる。
安土町の住民の活動や意識の現状として、資金面での支援など完全に行政から自立しているとまでは言い切れない面もあるが、依存心はかなりなくなってきているというのが、多<の委員の認識であった。
したがって、地域づくりにおける行政の支援や関わり方については検討すべき課題も残されているが、今後とも住民主体の地域づくりは着実に進んでいくという見通しが持てるだろう。

②課題に対応できる行政体制の確立を
もう一つの側面として、人口減少、高齢化などが予想される中で、地域・地区を越えた公共サービスの供給、教育の充実、高度医療の確保、都市基盤の更新・整備、安定して持続可能な経済基盤の確立といった一」とを計画的かつ着実に進めていくことを考えると、現在の町の規模と体制では不安があるという意見が多数出された。
ここに挙げた課題に応えるための体制を確立するには、ある程度の大きさの需要や対象人口が必要になるし、高度な専門性も求められる。そして、何よりもかなりの財源を要する。
安土町の現在の財政状況が厳しいことは言うまでもない。また、行政改革の中で一層の職員削減が図られるなど、行財政の面では、課題に対応する体制を確立することは難しいと言わざるを得ない。
しかも、町ではできないからといって国や県に支援を仰いでも、おそらく十分な対応を期待することは難しいだろう。これらの現状認識も多くの委員が共有していた。
この現状にどう立ち向かうかという点では、身の丈に合ったサービスや都市基盤を求めれば良い、町でカバーできない部分は周辺市町に依存する、広域行政(行政組合等)を活用して対応可能ではないか、という意見もあった。
一方で、市町合併をしてより広い視野でまちづくりに臨むべきであるという意見もあった。


4.結論 -将来のまちのあり方-
以上のような論議を踏まえ、本検討会議としては、次のような結論に達した。

①10年、20年先を見越した対策として、市町合併は検討に値する選択肢
安土町は住みやすく、住民として誇れる町である。また、現状に差し迫った危機があるというわけではない。現在の社会的、経済的、そして行財政的枠組みのままでも、数年は深刻な問題に直面することなく過ごせるかもしれない。
しかし、社会、経済情勢を考えると、現状に満足して安閑としているわけにはいかない。10年先、20年先を見越した対策をしっかり考えておくことは、現在の住民自らのためだけでなく、将来の住民に対する責務である。
そのような認識に基づき、早急に周辺の市町との合併についての検討が必要であると考える。なぜなら、「安土町の良さを守り次世代へ受け継いでいきたい」という多<の人々の期待を実現しようとしたとき、現在の町行政の規模と能力は十分ではないと思われるからである。
行政の不十分なところは住民や地域社会が補うということも必要であるが、それにも自ずと限界がある。むしろ、行政に十分な体制が確保されることによって、住民や地域は、より身近な自らの問題にじっくり取り組むことが可能になる。
行政の専門性や専任性の確保(特定の問題に対して、専門性を持った職員が責任を持って対応すること)、政策形成能カ(地域にある問題の中から、政策的に対応すべきものを的確に把握し、その解決のための枠組みや方針を提案する能カ)の向上を図る上で、市町合併が有効な手段になりうると考えられる。

②メリット・デメリット論よりも、安土にとって有効な合併を検討すべき
もぢろん、どのような制度や対応策にも完壁というものはない。市町合併についても、決して万能薬ではなく、むしろ多くのデメリットが指摘されているし、合併を経験した地域では、それらのデメリットが現実のものになっている例も見られる。しかし、本検討会議では、メリット・デメリット論にはほとんど踏み込まなかった。
その理由は、合併論議で利用される多くのメリットとデメリットの説明は、かなり昔から指摘されてきた一般論であり、メリットにしてもデメリットにしても、そのような可能性があるという程度の情報でしかないからである。
とりわけ、いわゆる「平成の大合併」の中で合併をした市町を見て、合併のメリット、デメリットを云々するのは早計である。デメリットは比較的早く現れるが、メリットが発現するには5年、10年の時間を要するからである。
過去の「明治の大合併」や「昭和の大合併」の例はたくさんあるが、地方分権が進展した段階で合併した市町が10年、20年経過した場合にどのような姿になるかという具体例は、残念ながら今は持ち合わせていない。
本検討会議では、安土町に対する委員の現状認識から、安土町の現状を大きく変えるような即効薬を求めるのではなく、持続可能な地域を確立していくために有効な中長期的な視点を重視した。
一般論でメリットやデメリットを論じたり、結果を論じるには時期尚早と言わざるを得ないごく最近の合併事例を検討したりすることよりも、私たちの目的にとって有効な合併はどのようにしたら実現できるかを検討することこそが、今後の合併検討において重要である。

③合併の態様・枠組みなどについては、住民・議会・行政がともに議論を
市町合併を行ったからといって、現在の財政状況が急に好転するとか、行政サービスが高度化するというような、幻想に近い夢を持っている委員はほとんどいなかった。むしろ、未知の経験をするのだから、不安も大きいし、一定のリスクがあることも重々承知している。
しかし、現状のままでは将来的にはリスクが予想されるということを勘案すると、市町合併にリスクがあるからといって検討対象から除外するというのではなく、積極的に検討を進める方が合理的である。
合併した結果について完全情報を持っていないのと同様に、合併をしなかった場合に何がどう変わるのか、という点でも十分な情報を持ち合わせていない。最悪の場合は、財政破綻であるとか、人口の社会減(流入人口より流出人口の方が多くなること)といったことも想定されるが、それも可能性のレベルである。私たちは、完全な合理的決定することはできないのである。
したがって、本提言は「初めに合併ありき」の検討を勧めているのではない。
幸か不幸か、安土町は合併協議に失敗した経験を何回か有している。おそらく、そこで学んだことの一つは、特定の相手との「初めに合併ありき」的な論議は、合併の必要性や意義が理解されにくく、したがって地方分権時代の合併としては不適当だったということであろう。
今回は、合併の目的を、「安土町の良さを守り、次世代へ受け継いでいくための体制や枠組みをつくる上で、人々が求める基礎自治体を生み出していく」という点に置いて、合併の態様、枠組みなどについて住民と議会、行政などが検討することから始めることを提案しているのである。
そして、このような目的の下で合併を検討するのであれば、それと並行して、現在の住民による自治活動やまちづくり活動を維持、発展できるような狭域自治の仕組みを確立し、合併協議の中でそれを将来にわたって確保していくことも必要である。

④合併の論議は合併新法の期限を目途に、タイミングを考慮して行うべき
合併についてのじっくりした検討が重要であるのは上述の通りであるが、ただ、論議に時間をかければよいということでもない。住民が合併について学び、論議を続けるとなると、ある程度の時間を区切って集中的にやった方が、中身の濃い意味のある検討が可能となるだろう。また、合併には常に相手があることであるから、タイミングを考えなければならない。
そして、仮に合併を進めることになった場合は、合併当初には様々な「初期コスト」がかかることから、合併新法による国や県の合併支援が行われる間に実現した方が有利である。
そのようなことから、平成21年度末の合併新法の期限切れを一つの目途とするのが妥当である。それに間に合うように、住民と議会、行政などが真剣に検討を進めるべきである。また、検討の進展によっては、関係市町との具体的な交渉、協議を進めることも必要である。
もちろん、期限内に何が何でも合併するということを要求しているわけではない。合併はしないという検討結果もあるであろうし、住民の納得できる合併を実現するためには、もう少し時間が必要だということになる場合もあるだろう。いずれにしても、合併新法の期限切れを視野に入れて、合併に対する安土町としての結論を出すべきである。

おわりに
本検討会議は、結論として町に合併の検討を進めるよう提言しているが、委員の中に合併に反対する人や消極的である人がいたのも事実である。
また、合併は必要だが、枠組み次第では賛成しかねるという意見もあった。町としては、そのような意見にも耳を傾けつつ、合併についての検討に着手されることを期待する。
また、合併の検討を進める際には、合併にのみ目を奪われるのではなく、現在の安土町における住民自治のあり方や将来の住民自治の姿についても検討をする必要がある。そこには、狭域自治の仕組みを検討することも含まれる。これらの検討と合併の検討が上手くリンクされることが期待される。
安土町において、これまで全国各地で行われた合併論議の形態や内容にとらわれないような新しい合併の検討が、住民、議会、行政によって展開されることを切望する。
by azch | 2008-08-06 23:56 | まちづくり研究会
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信長の安土城跡を始め貴重で豊富な歴史文化・自然環境を活かした「安土まちづくり」情報を発信


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